長月の、行事食は・・・?

ふと見上げれば、落ちてきそうなお月さま・・・。
下を見れば、まんまる、ふっくら、
そっとすくって、空也蒸し♡

料理/清水 紀子

9月の行事食は、・・・空也蒸し☆

<材料(2人分)>

空也蒸し・材料

    • 絹ごし豆腐………1丁
    • 卵………2個
    • だし汁………300ml
    • (a)しょう油………小さじ1
    • (a)塩………小さじ0.5弱
    • ニンジン………適量
    • 【 餡 】
    • [b]だし汁………60ml
    • [b]しょう油………小さじ2
    • [b]みりん………小さじ2
    • 片栗粉………小さじ0.5強
    • 青菜………適量

<作り方>

①.豆腐は、しっかり水切りをしておく。
蒸し鍋に湯を沸かしておく。

②.ボウルに卵を割り入れ、(a)とだし汁300mlを注いで、その都度混ぜ合わせてからザルで漉す。

空也蒸し・卵を漉す様子

③.豆腐を丸い型で抜いて、器の中心にくるようにして置いて、型から出す。

空也蒸し・クルセルなどで、豆腐を抜く

④.モミジや瓢型で抜いたニンジンを器に入れて、次いで②を等分して注ぐ。

⑤.蒸し器に④の器を並べて、蒸気が上がった鍋にセットする。

⑥.最初の1~2分は強火で、その後は火を弱めてから15~20分ほど、しっかりと固めるまで蒸す。

⑦.[b]を小鍋に入れて火にかけ、煮立ったら同量の水で溶いた片栗粉を回し入れ、とろみをつけてから火からおろす。

⑧.蒸し上がった茶碗蒸しに⑦の餡をかけたら、さっとゆでた青菜を雲に見立てて飾る。


「和心文化メッセンジャー」・・・山野亜紀からの一言♡

こちらのコーナーでは、日本の行事に関わる「行事食をテーマ」に、ご紹介をしています。
・・・毎月テーマが違うので、楽しみにしていて下さいね♡

9月の行事というのが、意外に多いので驚きました・・・。
まずは1日の「防災の日」
これは、1923年に発生した関東大震災の教訓を忘れないためと、昨今は異常気象でだいぶおかしくなってきてはいますが、台風(つまり、どれをとっても自然災害★)の多いシーズンでもあります。 (^^;)

・・・この記念日は、1960年に制定されたとありますが、その他にも重陽の節句敬老の日、お彼岸、秋の七草・・・などなど。
色々あるので今回は、どの行事を選ぶかでとても迷いました。

そんな中で「お月見☆」を選んだのは、せっかく秋なんだし、お江戸の頃らしく、風流志向で行けたら良いのでは・・・と、先生との意見が合致したからなのでありました。 (^_^)/

・・・ところで、実は私は「空也蒸し(空也豆腐とも)」なる料理名を初めて知りました・・・★
振り返ってみえば、旅館のお食事とかで食べたことはあるのかも知れませんが、その名前を意識した事がなかったんです。

今回は「お豆腐を月に見立てて、まぁるく仕上げて」いますよね。
・・・もともとは、「四角いお豆腐を、お寺のお堂に見立て」て。
お堂の周りを、空也念仏を唱えながら踊り回る様子を模して作られた料理名なのだと、資料にあります。
また、空也派の僧がよく拵えていたので、その名を「空也蒸し」としたのだ・・・などなど。
その名の由来にも幾つか、説があるそうです。

この・・・実在をされていたという、空也(くうや・又はこうやとも★)さん。
平安の頃に生を受け、たしかな素性は判ってはいないそうですが、僧として諸国を巡り、とある場所では橋を架け(!)
道を開き、井戸や池を造っては、荒野に遺棄されたという亡骸までを埋葬(!)
・・・貧者や病者を施し、囚人を教化していた・・・とも、あります。 ( ̄_ ̄ i)

当時のお坊さんというのは、・・・それは確かに今のように流通も設備も整ってはいなかったでしょうから。
困っている土地の民の為にもと、治水や土木工事までも行っていたのですね・・・★
そして医師であって看護士であり、しかも葬儀屋さんだった・・・★★★
・・・うーむ。
ずいぶん・・・現代のお坊さまとは、何もかもが違うように感じてしまうのは、気のせいなのでしょうか。(^▽^;)

そして常に「南無阿弥陀仏」の六時名号を唱えて、庶民に念仏行を勧めていたという・・・。
この念仏さえ唱えていればどんな身分の者でも極楽浄土へ行ける(!)という、この教えなんですが★
こうして考えてみると、ある意味での労働歌であり、心の慰めの歌でもあり、はたまた自らを奮い立たせる言葉でもあった・・・のでしょうか。 (‘_’)

空也蒸し

そんな・・・時代から愛されている、「お豆腐入りの、あんかけ茶碗蒸し」である「空也蒸し」
それは、大鍋で作ってしまえば「念仏を唱えるみんなで食べられる、身体に優しい労働者へのお食事」だったのかも知れません・・・。

何しろ、完全食品と言われている卵(!)がメインの茶碗蒸しです。
お出汁には、昆布と鰹節のアミノ酸やミネラルが豊かに含まれていて、そこには水溶性の食物繊維も。
・・・もうもう、疲れた身体には消化が良くて、身体を温めてくれるパワーまであるので、滋養にももちろん優れています♡

長月のお膳

・・・奈良時代に来たとも。
いやいや、平安の頃にはすでに、中国より伝えられていたともされる「お豆腐」には、女性には嬉しい大豆イソフラボンの他にも、美容や健康にも効果があるという、大豆サポニンも見逃せません。

秋の名月を眺めつつ、月に見立てた茶碗蒸しで、縁側で一杯なんてオツですな。
こんな風に、のんびり、ゆったりと過ごせる幸せを味わってはみませんか。 (〃∇〃)

<月の満ち欠け>

新月(しんげつ)・・・月が見えない真っ暗な夜。「朔(さく)」とも。

三日月(みかづき)・・・夕方、西の空に見える弓形の細長い月。

上弦の月(じょうげんのつき)・・・これから満ちていく半月。「弓張月(ゆみはりづき)」とも呼ばれる。

十三夜月(じゅうさんやづき)・・・これから満ちようとする縁起の良い月。

十五夜月(じゅうごやづき・・・最も美しい真円の月。いわゆる満月。

十六夜月(いざよいづき)・・・満月より少し遅れて出てくるため、いざよい(ためらい)ながら出てくる月。

立待月(たちまちづき)・・・今か今かと立ったまま待つ月。

寝待ち月(ねまちづき)・・・なかなか出てこないので、寝ながら待つ月。「臥待月(ふしまちづき)」とも。

更待月(ふけまちづき)・・・夜が更ける頃に出る月。

下弦の月(かげんのつき)・・・これから欠けていく半月。「弓張月(ゆみはりづき)」とも。

<2017.9.4更新>

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